DCCと突入電流の正しい知識。

 

先日、ケンズタウンで扱っております

デジタルコントローラー「Zephyr Xtra」の

商品説明を訂正、謝罪させていただきました。

訂正させていただいたのは、デジタル車に

対する突入電流回避方法に関する記述でした。

中途半端な知識で皆様に誤った情報をお伝え

してしまいましたことをここで改めてお詫び

申し上げます。

 

さて、そもそも突入電流(inrush current)とは

なんなのでしょうか。 今日日、出所に注意さえ

すればネットで詳しい解答を得られますので

詳細をお知りになりたい方は「突入電流」などの

検索ワードで調べてみてください。

 

少なくともDCCにかかわるような弱電分野では、

電流を流し始めるほんの瞬間の過大電流である

突入電流の原因要素は主に二つあるようです。

一つ目は回路内にあるフィラメント類(電球など)

です。 フィラメントに用いられている電熱線は

室温時と発光中の高温時でその抵抗が大きく

異なります。 もちろんフィラメントが含まれる

回路では点灯中のフィラメント抵抗を基準に

しているため、低抵抗の室温状態で発光前の一瞬、

多くの電流が回路に「突入」してしまうわけです。

 

二つ目は回路内にコンデンサーが含まれる場合

です。 コンデンサーは通電時は電気を溜めますが、

毎回電源オフで溜めていた電気を放電します。

よって、電源が入るたびに通電の瞬間のみ、

コンデンサーに蓄えられるべき電流が設計値を

超える過大電流として「突入」してしまいます。

しかし、いったんコンデンサー内の電流が

満タンになれば設計値の電流にすぐ戻るわけです。

 

鉄道模型のデジタル車にかかわる突入電流の原因は、

通常、サウンド付DCCにのみ装備されているコンデンサーか

麦球などの電球類を装備した車両ということになります。

もしかするとLEDにも突入電流が存在するかもしれませんが

お伝えできるほどの知識を今は持ち合わせておりません、

すみません。

 

で、この突入電流が回路にダメージを与えるという

情報と突入電流の回避手法について、一番正確な

情報が得られるであろうDCC関連製品の大手メーカー

であるDigitrax社のテクニカルサポートセンターに直接

問い合せてみました。 何度かやりとりをした後、

重要な内容だけに誤解が生じないよう、

先方に間違いのないことを確認してもらった内容だけを

以下に書きます。

 

1.アメリカで市販されている、サウンド機能が装備

されていないDCC車両を使用する場合には、突入電流

は発生しません。なぜなら、サウンド機能が装備されて

いないDCCデコーダー回路には、購入後の改造等が

行われていなければ、突入電流の原因となるコンデンサーは、

使用されていないからです。

2.よって、少なくともアメリカ製なら、サウンド機能を

搭載していないデジタル車両に突入電流問題はありません。

.サウンド機能付車両内にはサウンドデコーダー(基板)が

搭載されているわけですが、コンデンサーは基板外の

回路に存在しています。

しかし、この程度の突入電流強度で故障を引き起こす

ダメージを受ける鉄道模型車両用デコーダーは存在しません。

.デジタルコントローラーのパワーボタンを先に押して

既に通電した線路に車両を置くという手法は、突入電流

の回避策としては全く効果はありません。

(回路内のコンデンサーが原因ですから、車輪が

線路に触れた瞬間にやはり突入電流は発生する

わけです)

 

以上の4点について再確認をとったところ、先方担当者から

内容が正しいという返事と共に、

「….I think you understand(理解している) completely(完全に).」

という回答をいたさきました。

デジトラックスの担当者の方、丁寧に解説を

していただいてありがとうございました。

Thank you sooooo much!!

 

それではみなさま、また次回までさようなら(^0^)/

 

 

 

 

 

DCCと突入電流の正しい知識。」への6件のフィードバック

  1. いちもる様

    ご丁寧なご返答をいただきましてありがとうございます。

    デジタルに対するハードルが高いとお感じのファンがまだ
    まだ多いように感じられる日本市場です。
    今後、デジタル車両やデジタル制御機器が、日本でも
    自然なかたちで魅力を発揮し、浸透してゆき、そして
    何よりわくわく楽しんでいただけることを望んでおります。

  2. うっち―様

    大変ご丁寧な説明をいただきましてありがとうございます。

    確かに、万が一と言う事あるかもしれないとなれば、そこは予防線を張るような回答をするメーカーさんもあるかもしれませんね。
    突入電流について、ずっと気になっておりましたので、とても分かりやすいご説明をいただきまして腑に落ちました。

    本当にありがとうございます。

  3. コメントをいただきましてありがとうございます。

    「通常使用で、突入電流が原因でデコーダーが破損する
    可能性は非常に低い」という解釈でいいと思います。
    ただし、本文中にもありますとおり、これはデジトラックス社の
    技術問い合わせ担当の方の回答です。
    デジトラックス社は車両搭載用のデコーダーも作っていますか
    ら発言の信頼性は高いと思いますが、もしかすると他のデコ
    ーダーメーカーの技術者は非公式に違うことを言うかもしれ
    ません。メーカーによって、回路も電子部品の素性も異なる
    からです。
    日本で突入電流とデコーダー破損の話が出る場合は、長期
    耐久性にかかわる破損のことかと思います。
    前述の担当者の方の意見は、恐らく通常頻度の使用中の
    破損はないという意味合いでしょう。
    仮にデコーダーに寿命があるとして、例えば10年以上毎日
    使用した場合も突入電流による寿命への悪影響はないの? 
    ということになりますと話は経時耐久性の問題になります。 
    メーカーでこの手の耐久性試験が行われているかどうかは
    わかりませんが、公平な専門機関が、公正な試験方法で
    得たデコーダーの突入電流耐久試験結果というものを私は
    見たことがありません。 もしかすると日本の鉄道模型専門
    誌の誌上企画などで行われたことがあるかもしれませんが、
    寿命という話になれば、突入電流は回路にとってうれしいもの
    ではないので、悪影響が全くないとは言いきれないと思います。

    長期にわたって連続使用するような場合を除いて、回路内
    に隠れた不良部品がなければ、突入電流ですぐさま破損
    という事態はほとんどないと考えていいのではないでしょうか。
    私は7年来、各社のデコーダー搭載車両の検品を行ってき
    ましたが、通電と同時に破損した例は一度もありません。

    誤解があってはいけないと思い、内容が長くなってしまいまし
    た。
    当ブログを読んでいただいているとのこと、大変うれしいです。
    これからも読んでいただけるようがんばっていきたいです。
    ありがとうございました。

  4. 突入電流について、興味深いお話ありがとうございます。
    自分はDCCをメインでやり始めてもない者です。
    こちらのブログの記事を色々と読ませていただいております。
    最後のまとめの3つ目の項目が特に気になるのですが、突入電流に関してデコーダーの破損と言う事は、ほぼ起こりえないから気にしないでも良い、ということなのでしょうか?

  5. ケンズタウン店長の内山でございます。
    やあさんさま、コメントをいただきましてありがとうございます。
    やはりコメントをいただけると皆様方に本当に読んでいただけているという実感が湧いて
    明日へのエネルギーをいただけるように感じます。
    さて、突入電流の件、経験者からの貴重な情報を本当にありがたく思います。
    このような時代ですので氾濫する情報の中から信用できる出所、信用できる内容を
    選別するのは簡単ではありませんよね。
    将来、「ここへ来ればきちんとした情報が得られる」とみなさんに思っていただける
    場になればと思っております。
    これからも皆様に誤情報を流してしまわぬよう十分気を付けたいと思います。
    そしてもし仮にここへ、意図せず間違っていると思われるコメント等が表示されましたら
    どうぞ相手への思いやりの心遣いとともにご指摘いただければと存じます。

  6. 趣味でDCC コントローラーを作りつつ、電機メーカーに勤めているものです。突入電流は、産業用の機器ではかなり重要な問題で、原因はほぼ、線路にぶらさがっているコンデンサです。いくつか対策方法はあります。

    一番ベタなのは、途中に小さい容量の抵抗を置いて、コンデンサなどへの充電が終わったのを見はからってリレーやスイッチなどで抵抗をジャンパさせる回路を足すことです。

    2番目は、線路のインピーダンス(抵抗)から流れる電流値をシミュレーションで求めて、それに耐える部品でデコーダを作ることです。

    デコーダにコンデンサがあまりないのは不安定な動きの原因になるのですが、突入電流問題もあり、物作りの立場としては頭がいたいですね。

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